たてよこななめ

 誕生祝いのメッセージを下さった方々、この場を借りて改めて感謝申し上げます。張龍・風意のお二人、素敵なプレゼントをありがとう。


 過日はこれまた思いがけない贈り物も。うらうらと晴れた昼、『かね正』で下地を入れていつものように『ふみ』に向い、ボート選手の品評に耳を傾けながら(鯨馬自身は致しません)、ぽつねんとかつ陶然と(一軒目の熱燗がだいぶ効いてきた)呑んでおりますと、見たような風体のゴツい兄ちゃんが。


 店をたたんで以来、ずっと会ってなかった某氏だったのでした。「知った顔に遭遇するのが億劫でこちら方面にはあまり出てなかった」とのこと。久々に見るのが当方如きでは申し訳無き仕儀であるが、いっぱい機嫌で緩みの出た表情にこの程度なら気の置けることもないと安心したようで、結局は『ふみ』を含めて都合三軒ほたえ回ることになる。最終は兵庫駅前の『原酒店』だったので、呑んだことも呑んだが、ずいぶん歩きもした。翌朝ぴりっともこなかったのはそのためか。。

 では最近の本。
○ジム・ホルト『世界はなぜ「ある」のか? 実存をめぐる科学・哲学的探索』(寺町朋子訳、早川書房)…文庫化の広告でタイトルに惹かれて単行本を読んだ。物理学・神学・数学・哲学と色んなジャンルの専門家が考えていることが要領よく紹介されていて(著者がインタビューに行っている)面白い。アップダイクにも会って話を聞いている。へえ、アップダイク。単なる勘だけど、ステーィヴン・キングやチャイナ・ミエヴィルならこのテーマにそれほど興味を持たないのではないか。逆説的だが、超自然の物語の紡ぎ手こそ自ら地盤を掘り返すことはしないはず(小説家としてどちらのタイプが上かという問題ではない)。無論結論が出るわけはないけど、たまには世界は何故始まったのか(「どのように」、ではなく)、首をひねってみるのも愉快です。「ある」と「ない」とは本当に対になる概念なのか?とか色んなことを考える。
○高橋真理子『重力波 発見!』(新潮選書)…前書のサブテキストとして。
○R.L.スティーヴンスン、ロイド・オズボーン『引き潮』(駒月雅子訳、国書刊行会)…スティーヴンスン最晩年の作。アトウォーターという宣教師がブキミ。ジョン・ファウルズ『魔術師』のコンチスを思わせる。カリブや太平洋でひたすら堕落していく白人という風情もいいなあ。グレアム・グリーンも影響を受けたのではないか。
○八木沢敬『「論理」を分析する』(岩波現代全書)…今回も面白かった。八木沢さんなら「世界はなぜ「ある」のか?」にどう答えるんだろうなあ。次は「数」の本になるそうである。楽しみ。
大隅和雄『日本文化史講義』(吉川弘文館
○吉田敦彦『女神信仰と日本神話』(青土社
○倉聖哲・実方葉子・ 野地耕一郎編『典雅と奇想 明末清初の中国絵画』(東京美術)…図録だが、充実している。どの画家も(どの文人も、と言うべきか)個性がきついねえ。泉屋博古館は行ったことがないが、これだけの優品があるなら行ってみたい。
○秋山總『聖遺物崇敬の心性史』(講談社選書メチエ
○山本芳久『トマス・アクィナス 理性と神秘』(岩波新書)…いい入門書。トマスなんて素人では歯が立たないのは分かりきっているから、こういう本は貴重である。おざなりの伝記+学説概要ではなく、存分にテキストを引用して、トマスのいわば論証=思考のパタンを実地に示してくれるのが特に有り難い。それ以外にも、物凄い量の著述をものしたあげく(しゃべるスピードで書かないと説明が付かないほどらしい)、執筆を途絶してしまったとか、現世をとことん肯定していたとか、知らないことだらけで一気に読み上げてしまう。時折ひびく護教的な口調がやや耳障りだけど。
○石野裕子『物語フィンランドの歴史 北欧先進国「バルト海の乙女」の800年 』(中公新書
保阪正康『定本後藤田正晴』(ちくま文庫
○君塚直隆『ベル・エポックの国際政治 エドワード七世と古典外交の時代』(中央公論新社)…超抑圧的な両親のもとで長年皇太子のまま即位できなかったのは可哀相、と思う反面、母ヴィクトリア女王の懸念もまた宜なるかな、とも思う。
○東より子『国学曼荼羅 宣長前後の神典解釈』(ぺりかん社
○横田文良・辻調理師専門学校『中国の食文化研究』(ジャパンクッキングセンター)…「北京編」「天津編」「山東編」と三冊ある。もっと出してよ!
○古谷暢基・平川美鶴『和ハーブ図鑑』(素材図書)
○スティーヴン・レ『食と健康の一億年史』(大沢章子訳、亜紀書房)…数々のダイエット流派が激しく対立するアメリカって国自体がやっぱり異様である。
○福田浩・松藤庄平『完本大江戸料理帖』(「とんぼの本」、講談社)…加賀料理と京料理の縁は誰でもいうけど、肌合いからいけばむしろ江戸料理の方に近しいのではないか。それにしても、いい器だなあ。

 

 

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