花はさくら木・・・

昨晩は平野交差点角の「はんなり祇園」で飲んだ。

職場から、夜桜見物がてらぶらぶらと川沿いに歩いているうちに俄然酒が飲みたくなったわけである。

わかりますよね、このきもち。

桜は夜桜に限る、と言いたい。ふだん目にするのはほとんどが人間ほどの寿命しかもたない染井吉野だから、昼間に見ると老木の樹皮の荒れよう、枝のさがり具合がいかにも頽落といった感じで見ているほうが蕭然とすることも少なくないのだが、夜闇に象嵌されたようなうずたかい花弁を見ていると、いつのまにか樹に凝然とみすえられているような、妖しい感覚にひきこまれていく。

で、飲みたくなった。

「はんなり祇園」で頼んだのは蛍烏賊の酢味噌、若竹煮、鯛かまの塩焼き。

この鯛かまが堂々としていて堪能できた。鯛は好物である。へんな表現だけれど、味も堂々としているのがよい。油目も穴子も、鯛に劣らず好きだけれど、なんというか、鯛に比べるとどこかけれん味があるのは否めない。

まあその分、陳腐に堕しやすいともいえるわけで、だからこそ「花は桜、魚は鯛」と言い切った谷崎潤一郎はやはり大作家だなあ、と思う。私見では大作家にはこうした月並みをおそれない臆面のなさが必要なのである。

鯛かまの相手は佐賀の「東一」と「三千盛」。「はんなり祇園」のあと、二軒はしご酒。久々の鯨飲でした。

桜の魔力、おそるべし。