百日の説法、屁ひとつ

 長生きをするつもりはないから健康にはほとんど気を配らないけれど、無様な体型をさらすのは何かと不都合が多い。まだまだモテたいのじゃ、わしは。

 それで、このひと月は減量月間と決めて食事制限をし、運動量を増やしていた。職場の健康診断がちょうど十一月にあるから、それに向けて目標を設定していた。やり出せばパラノイア的に結構やりこむ質なのに、日曜がたまたま出勤でどたばたしたのと、私生活で鬱憤が溜まっていたのと・・・ま、何よりワインにかつえておったのでしょうな。仕事終わり、ふらふらと『テラサナ』に電話をかけて予約してしまう。

 日曜日でいつもより客は少なめと見ていたが、いやあやっぱり大繁盛。この日は『いごっそう』の大将・トミーがその一統を引き連れて来臨。こちらは一人だがなんとなく華やいだ気分で呑む。

 ともあれ腹が減っていたので、今回料理はマスターにお任せ。名代のコールスローから始まって、生ハムと茄子の前菜、蓮根のソテー、チーズポテトグラタン、仔羊のロースト(カレー風味のクリームソースと、中東風の香辛料で食べる)、それでもまだ満足せず鴨の藁焼(だって鴨好きなんだもん)、あげくの果てにはシラウオカラスミのパスタまで、まあ良く食べたものであった。

 当然ワインも赤白取り混ぜ八杯ほど。ヴェネトの白(シャルドネ、香ばしい)とスペインの、ローヌに似た赤が美味しかった。これが健康診断の前日でなかったら、ボトルでぐいぐいいってたのですがね。さてどのような結果になりますやら。

 ※翌朝、絶食しなければならず、水も飲んではいけなかったのを忘れていた。午前中はほんと苦しみました。


 最近読んだ本。

◎永井三明『ヴェネツィアの歴史 共和国の残照』(刀水書房)・・・まだまだヴェネツィア熱は冷めぬ。ぜーんぜん冷めぬ。
ヘンリー・ジェイムズ『郷愁のイタリア』(海外旅行選書、図書出版社)・・・そう、冷めてはおらぬのです。それにしても、あのジェイムズにしてからがやっぱりヴェネツィアにイカれてるのが丸わかりで面白い。あんまりすいすい読めるので、かえってこれで読めてるのか、と不安になる本(『鳩の翼』はなんど挫折したことか!)。
池澤夏樹『現代世界の十大小説』(NHK出版)
◎河原田盛美『沖縄物産志』(平凡社東洋文庫
◎王凱『中国宮廷美術史』(大学教育出版)
◎キノブックス編集部編『本なんて! 作家と本をめぐる52話』
ル・クレジオ『隔離の島』(筑摩書房
中島隆博編『コスモロギア 天・化・時』(シリーズキーワードで読む中国古典、法政大学出版局
山口昌男川村伸秀聞き手『回想の人類学』(晶文社)・・・晩年のインタヴューのせいか、山口さんの口ぶり、いつもみたいな毒舌と饒舌の迫力がない。人類学の門外漢にとっては、クリストファー・コールドウェルと言う人の『幻影と現実』(法政大学出版局叢書ウニベルシタス)なるイギリス詩人論や、ジョージ・トムスンのAeschlus and Athensなんて本を教えてもらえたのは収穫。さっそくアマゾンにて注文した。マルクス主義系統の芸術・文化論なんて自分では読もうとしないからなあ。
◎徳永恂『絢爛たる悲惨 ドイツ・ユダヤ思想の光と影』(作品社)・・・アドルノの『啓蒙の弁証法』(岩波文庫)の参考書になるかなと思ったが、学会での講演速記がメインの文集であり、なんだか話の脈絡がたどりにくい。ま、読む分には面白いのだけど。研究者や学者ではないから、あの無闇に暗くて難しいアドルノなんか読まなくってもよかりそうなものだけど、人生軽くて分かりやすい要素ばかりから成るのではない。
冨田恭彦『観念論の教室』(ちくま新書
大喜直彦『神や仏に出会う時 中世びとの信仰と絆』(歴史文化ライブラリー、吉川弘文館)・・・これは大喜氏の本を言うのではないが、このシリーズ、玉石混交が甚だしく、中には読んで腹立たしくなるような代物も混じっている。注意されたし。

 さてこのところの秀逸といえば、

◎今関天彭『江戸詩人評伝集 詩誌『雅友』抄 1』

 編者は揖斐高先生。院生の頃、苦心してコピーを集めたものだったが、学問を離れた今、楽々と手に入るようになったのはなんとも皮肉なもの。著者が自分の好みも露わに出しているところが、いい。たとえば市川寛斎には明らかに冷淡だが、柏木如亭に対しては惻々たるシンパシイを寄せているのがよく分かる。所々に混じる評言も鋭い。柴野栗山を「大まかな人柄」と形容するのはすぐれたスケッチだと思う。平凡社東洋文庫近来の名企画と言えるでしょう。

江戸詩人評伝集1: 詩誌『雅友』抄 (東洋文庫)

江戸詩人評伝集1: 詩誌『雅友』抄 (東洋文庫)

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