閏二月決算

 予告しておいた双魚書房通信はもう少しお待ち下さい。一年間発行していなかったのでちとリハビリに時間を要しております。

 読書にニッパチはない。
○マット・リドレー『繁栄 明日を切り拓くための人類10万年史』(大田直子訳、ハヤカワ文庫)
○渡辺憲司『江戸遊里盛衰記』(講談社現代新書
瀬戸内寂聴『奇縁まんだら』(日本経済新聞出版社)…一人芝居近代日本文学史
いしかわじゅん漫画ノート』(バジリコ)…絵と物語と世界観をひとくちに評するのがすごい。
デイヴィッド・ミッチェル『出島の千の秋』上下(土屋政雄訳、河出書房新社)…うーむ、怪作。ここまで露骨にオリエンタリズムぷんぷんしてると壮大な冗談か何か分からなくなってきますな。
○今関天彭、揖斐高編『江戸詩人評伝集 詩誌『雅友』抄 2』(平凡社東洋文庫)…頼山陽は隠れ袁枚党らしい。という記述に興味をもって『随園詩話』読み始めた。中国書は安いのだが、字が細かくて困る。
○ジェフリー・ブロトン『世界地図が語る12の歴史物語』(西澤正明訳、バジリコ)
赤川次郎赤川次郎文楽入門 人形は口ほどにものを言い』(小学館)…興行スケジュールや演出が古くさくて工夫がない、という指摘には同感。ただ、こちらは著者の絶讃する近松の心中物をさして好まない。文楽近松という図式も「古くさい」のではないか。最近の若い世代にはむしろ時代物のほうが受けるかもしれませんよ。
○長谷川渓石『江戸東京実見画録』(岩波文庫
中野三敏『師恩−忘れ得ぬ江戸文芸研究者』(岩波書店)…『本道樂』の続編的内容。前著のゆったりした趣に欠けるのは、比較的若い世代のことを叙するうえでは避け得ないところか。
矢野誠一『舞台の記憶 忘れがたき昭和の名演名人芸』(岩波書店
○山形孝夫『読む聖書事典』(ちくま学芸文庫)…もとは岩波ジュニア新書の一冊。それでも充分内容が濃い。言うまでも無くこちらにキリスト教−正確には旧約の−の基礎知識が乏しいため。都市・農耕に対するイスラエル人の敵意というものがはっきり分かる。
○ウィリアム・シットウェル『食の歴史 100のレシピをめぐる人々の物語』(栗山節子訳)…アピキウスから『エル・ブジ』まで。アメリカの工業食品も丹念に取り上げている。「美味しさ」もうつろうものなのである。日本料理でこういう歴史を書いて欲しいんだけどなあ。
門脇俊哉, 内山英仁, 橋本亨, 山本晴彦『板前割烹の先付と酒肴 8テーマ160品』(柴田書店)…何品かヒントをもらった。それにしても、二日前に行った『あま野』といい、ここに登場する板前といい、店の名前がことごとく自分の苗字というのは味気ない(『あま野』は旨かったですよ)。「萩正」とか「ふな卯」とか「無月庵」とか(全部架空の名です)、おっとりと昔ふうの名乗りもあっていいんじゃないでしょうか。河村藤雄の八橋とか山崎松尾の徳三郎みたいで、色気がないことおびただしい。
○田中康二『本居宣長の国文学』(ぺりかん社)…辞書みたいな造り。
○水谷周『イスラーム信仰とその基礎概念』(晃洋書房)…原罪無き宗教の明るさ。日本人にはかえって理解しやすいのかも。
○田中久夫『田中久夫歴史民族学論集5 陰陽師と俗信』(岩田書院
矢野憲一『魚の文化史』(講談社学術文庫)…色んな挿話があってそれは面白いけど、考察は杜撰なとこが多いなあ。
○廣瀬玲子編『人ならぬもの 鬼・禽獣・石』(「シリーズキーワードで読む中国古典」法政大学出版局
○ローズ・トレメイン『道化と王』(金原瑞人ほか訳、柏書房)…チャールズ2世に仕えた医師兼道化の一代記。王の愛人との偽装結婚を命じられ、ある「軽率な行為」で失寵し、そこからの転落人生を経て最後はロンドン大火、そして・・・という半ばメルヘンのような肌合いの小説。軽薄で尊大で(ステュアート家ですものね)きらびやかなチャールズ2世の肖像がよく描かれている。
○ペーター・スローターダイク『シニカル理性批判』(高田珠樹訳、ミネルヴァ書房
○ステュアート・グリーンブラット『シェイクスピアの自由』(高田茂樹訳、みすず書房
トーマス・セドラチェク『善と悪の経済学 ギルガメシュ叙事詩、アニマルスピリット、ウォール街占拠』(村井章子訳、東洋経済新報社

 そして、
○三木あき子他編『村上隆の五百羅漢図展』(森美術館)…「!」に尽きます。キリスト教にもたいがいエグイ図像というのはあるが(頭にナタをめりこませてる聖人とか)、仏教的醜怪はそれとも違って、なんか宇宙的に壮大でよい。現物のサイズ(横幅百メートル!)で見たかった。

あと最近ずっと読み続けているのが、雑誌『郷土研究 上方』(の復刻版)。こういう性格の雑誌は隠微に湿った仲間内の自己満足に終始しがちだが、風通しがよくて、寄稿の質もおおむね高い。「四天王寺特集」とか「千日前特集」とか、名前見ただけでもわくわくしますねえ。




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