トアロード縦走

  トアロードの下の方にあるもつ鍋屋で飲み会があった。最近いいお店をいくつかトアロード沿いに見つけている。なんとか雨も止んだようなので、家から散歩がてら歩いていくことにした。

  まずはフロレスタでドーナツを買う。これは明日の朝ご飯用。1000円以上お買い上げで先着50名様にリネンの買い物袋プレゼントか・・・一人ではキツいな。飲み屋にお持たせとして買うか。

  ドーナツ屋からすぐ右に入る、つまりトアウェストの真ん中へんの洒落たビルにはCasa diArrecriaという、サーカスのような名前のチーズ専門店がある。「ボルドーのボディがしっかりしたワインに合わせたいんですが」と相談すると、ウォッシュタイプのアンジというチーズを薦めてくれた。熟成のピークからほんの少し過ぎたくらい、なのだそうで。爛熟とか頽廃とか大好きな人間としては買わないわけにはゆかぬ。今月の中旬からは、ボジョレーで洗ったモンドールというチーズも入るそうな。これも旨そうである。

  ドラートという蜂蜜専門店のことはいつか書いた。今日はオレンジの蜂蜜。これ、チーズに少したらしてもいいんじゃないか、と思いついて。

  と買い物をしだすと切りがないのだが、欲を言えばここに自分くらいの年齢の男が入れる服屋とそれから古本屋があれば、と思う。トアウェストでさすがに服を見てると場違いの感は否めない。古本屋のほうは最近一軒できたことはできたのだが、悪い意味で素人くさい。つまり店が汚い。というのは古びていたり埃っぽいというのではなく、雑然として秩序がないのである。これはまあしかし、「熟成」を気長に待つしかないか。

  カフェやバーは、こちらが知らないだけで多分色々あるのだろう(ご存じのかた、教えて下さい)。少しあがれば『紀茂登』はあるし、なんだかこの一角だけで半日過ごせそうな気もしてくる(気のきいた画廊もほしい、と思う)。

  さて飲み会のあと、どこにもよらず家にまたも徒歩で帰る。トアロード逆走、である。あのもつ鍋屋、味はともかく客あしらいのぞんざいさ、というよりはっきりいって無愛想・無気力ぶりは相変わらずだな、閑散期の夏はまだましなのだが、などと考えつつ、雨に濡れて黒光りする坂道をだらだらとのぼってゆく。