しば漬けを漬けましょう

 十一月に夏日なんて嫌だなあ、と思っていればいきなり冷寂の気天下に満つ。結構なものである。茄子の値段も少し落ち着いてきたことであるし、しば漬けを作ってみましょう。

 茄子は縦四つに割ってから六等分したあと、水にさらしてアクを抜いておく。でないと仕上がりの色が悪くなります。胡瓜は茄子と同じように切り、塩ひとつまみで軽くもんでおく。茗荷の子は小口でもいいんですが、縦四つ割くらりくらいの大きさが、しゃりしゃりした口当たりと香気が楽しめるので好きです。胡瓜と混ぜておきます。分量は茄子・胡瓜・茗荷が二対二対一。さて茄子のアクを抜いたら、胡瓜・茗荷と混ぜて押しをかけます。これは卓上漬け物器で十分。一晩このまま置くと塩がなれてまろやかになります。この季節なら冷蔵庫に入れなくても構いません。ここまでが下漬け。 翌日上がってきた水分を切り、ここに改めて漬け汁を加えます。家では自家製梅干しの梅酢と味醂、薄口醤油を混ぜています。按配は好みをさぐってください。醤油は軽く香りをのせる程度でないと梅酢の爽やかな酸味が効いてきません。全体に液をまわし、生姜の繊切りを混ぜてここからは下漬けよりもやや強めに押しをかけます。一〜二日目が食べ頃。

 やや地味な色合いですが、あの毒々しい紅紫に染まった、いかにも不自然にぱりぱりする、舌がしびれるような調味の、市販のしば漬けとは比べようのない高雅な味わいです。 この日はやや漬かりが浅いものの、このしば漬けに真魚鰹の幽庵焼き、粕汁(具はぶりかまと人参、大根のみ)、銀杏と木耳の白和えの献立となりました。心持ち辰巳浜子『料理歳時記』(名著である)の文体を真似てみたのですが、いかがなものでしょう?