月に鳴く亀

  最強寒波襲来の日、神戸でも珍しく雪が舞った。青森や新潟など雪害に苦しめられている地域の方々には申し訳ないが、都会の雪は風情がある。とくにめったに降らない雪を見て、街ゆく人が一様に弾んだ表情で空を見上げている、その風景が佳い。

  さて、この極寒の日こそ鍋じゃ鍋。というわけで、この日は新開地・・・というか湊川公園近くの『一寸法師』にてすっぽんを食べた。

  胆と卵の旨煮、えんぺらの吸い物、造り(身のたたき、胆、卵も盛り合わせている)、唐揚げと来て鍋。最後の雑炊が一番旨かったことはいうまでもない。こちらがすっぽんになりそうなくらい堪能した。 一人前七千円でお肌ツルツルはたいへんお値打ちと存じます。ここは鍋以外にも魚料理が充実している。ご主人は多分「中央」(卸売市場)に仕入れにいっているはず。

  すっぽんは食ったが福原にも寄らず帰宅して、風呂に浸かりながら、さんちかの古書市で買った永六輔『芸人 その世界』を読む(湯気で本がムレるのが難点だが、気分がよいものです。第一安上がりだし)。芸人の奇行のエピソードばかりを集めた、これ自体奇書といえる本でむやみに面白い。この面白さ、どこか覚えがあるなあと考えて思い出す。ジョン・オーブリの『名士小伝』(冨山房百科文庫に入っている。いいシリーズだったのに、新刊がでなくなったのは残念でならない)とか、『世説新語』(これは漢籍。愛読が高じて江戸期の版本まで入手した)とか、はたまたマルセル・シュウォッブの『架空の伝記』とか、昔から畸人伝のような書物が好きだったのだ。そうそう石川淳の『諸国畸人伝』も落としてはいけない。

  彼らのヘンクツ、素っ頓狂、いっそ上方ことばで「ケッタイ」と言いたくなる言行を面白がるのは、自分のことをまっとうな常識人と見なしているからだろうなあ。それも他人様から見たらどう見えるか、わかったものではないけれど。
 
 風呂から上がると、ピエール・マクシム・シュールの『想像力と驚異』、ジョン・ファウルズ『マゴット』を読み続ける。後者はこの日読了。『コレクター』『魔術師』の作者と思って期待していたのだが、これはどうもねえ。後半はすっかり興味索然という感じであった。瀬戸川猛資さんなら喜んだだろうか。ま、こういうとんでもない作品を大まじめに書くのもある意味大作家の面目というところかもしれない。


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