市長のブログ

 最近久元喜造さんのブログを愉しんでいる。本好きは本好きの人間に無条件に好感を抱くものですが、この市長さんも激務(であろう)のあいまにじつによく読んでいる。またその本も、御本人が「ハウツー本より小説が好き」とおっしゃるように、揖斐高『江戸漢詩の情景』とか池上永一『ヒストリア』とか、嬉しくなるような選択が多い。ま、自分が読んでる本と一致してるから喜ぶってえのも品が無いけど。本の感想を丁寧に語ってるのも好もしい。マスメディアの批判に真率に反論しているのもよい(無視するのでもキレるのでもなく、ね)。

 全く行政とかのことには疎いけど、政策に関しても、この市長さんは健全にものを考えて動ける人なんではないかなあ、という印象。

 と褒めたあとでいつも通り書名を羅列するのは慚愧に堪えません(公務員的口調)。

○前川佳子・近江晴子『船場大阪を語りつぐ   明治大正昭和の大阪人、ことばと暮らし』(上方文庫別巻シリーズ8、和泉書院)……語られる内容も小説のように面白く、戦前までの大阪という都市生活の情報としても貴重で、そして何より口調が素晴らしい!
鶴見俊輔ドグラ・マグラの世界』(講談社文芸文庫
宮部みゆき半藤一利『昭和史の10大事件』(文春文庫)
吉本隆明『わたしの本はすぐに終わる 吉本隆明詩集』(講談社文芸文庫
○田中亮『もっと知りたい日本の書』(東京美術
稲賀繁美末木文美士中島隆博『美/藝術』(日本の近代思想を読みなおす3、東京大学出版会
出久根達郎出久根達郎の古本屋小説集』(ちくま文庫
都筑道夫『二十世紀のツヅキです 1986ー1993』(フリースタイル)
ジョイス・キャロル・オーツ『とうもろこしの乙女、あるいは七つの悪夢』(栩木玲子訳、河出書房新社
○ピーター・H・ウィルスン『神聖ローマ帝国 1495-1806』(山本文彦訳、岩波書店
○トーマス・メディクス『ハプスブルク 記憶と場所』(三小田祥久訳、平凡社)……ベンヤミンやジャン・アメリーの都市エッセイの系譜。ま、よく言えばあれらより小味、悪く言えば柄が小さいのだけど。
嬉野雅道『思い出リゾート』(光文社)
津野海太郎『歩くひとりもの』(思想の科学社)……題名通り、すたすた歩くような風情の書きぶりが、よい。
○メアリ・マッカーシー『私のカトリック少女時代』(須賀敦子の本棚7、若島正訳、河出書房新社)……若島さんが言うとおり、マッカーシーの最高傑作。
○山田邦明『戦国のコミュニケーション』(吉川弘文館
東海林さだお『丼めしの丸かじり』(朝日新聞出版)……コロナ最中の連載をまとめているので前巻に引き続きトーンは暗めだけど、ともかく東海林さんの文章がまだ読めることは何よりも喜ばしい。
○デーヴィッド・クレッシー『火薬の母 硝石の大英帝国史   糞尿と森が帝国を支えた』(加藤朗訳、あけび書房)……こんな説を聞いたことがある。長篠合戦で惨敗した武田家もじつは鉄砲のちからは認識していた。信長が勝利したのは所有する鉄砲の数ではなく堺をおさえたことによる硝石の独占による、というもの(硝石の国産化はまだの頃)。
○イレネ・バジェホ『パピルスのなかの永遠』(見田悠子訳、作品社)
オルハン・パムク『パムクの文学講義 直感の作家と自意識の作家』(山崎暁子訳、岩波書店
○ジュール・ミシュレフランス史10 アンリ四世』(桐村泰次訳、藤原書店)……思えばこのシリーズにもだいぶん長い間付き合っている。アンリ四世は思ってたとおりしたたかなヤツ。でもその前のシャルル九世(聖バルテルミの虐殺おこしたやつですな)やら、アンリ三世(シャルル九世の弟)やらのアクが強烈で、結局のところ「近代人」に過ぎないアンリ大王は影がうすい。ミシュレの筆もこういった怪物どもを叙すときの方が生き生きしてる気がする。
○『聞き書きアイヌの食事』(日本の食生活全集48、農山漁村文化協会)……ええ、言わずもがなですが『ゴールデンカムイ』にかぶれたせいです。
○奈倉有里『夕暮れに夜明けの歌を 文学を探しにロシアに行く』(イースト・プレス
○榎園豊治『日本料理の仕事大観 一流の技・知恵・秘伝』上下(旭屋出版)
○ハンス・ブルーメンブルク『メタファー学のパラダイム』(叢書ウニベルシタス、村井則夫訳、法政大学出版局
○ジャン・ゴルダン、オリヴィエ・マルティ『お尻とその穴の文化史』(藤田真利子訳、作品社)
○エリン・モーゲンスターン『地下図書館の海』(市田泉訳、東京創元社
半藤一利『B面昭和史 1926⇒1945』(平凡社)……半藤版「(明治ならぬ)昭和東京逸聞史」。
○ジェイムズ・スティーヴンズ『月かげ』(阿部大樹訳、河出書房新社
高階秀爾『日本人にとって美しさとは何か』(筑摩書房)……少し繰り返しは多いけど、ページごとに発見がある。さすが。
エドワード・ブルック=ヒッチング『地獄遊覧 地獄と天国の想像図・地図・宗教画』(藤井留美訳、日経ナショナル・ジオグラフィック