ハーバーのカモメは飛びもせず

 久々に平日が休みだったので、用事ついでに近くの神戸阪急をのぞいてみた。ご存じでしょうが、三月に閉店するのでつねにセール中、という話を聞いたので寄ったのである。 ・・・うーん平日とはいえ、この閑雅なこと。服(ふだん着る物)はたしかに安くなっていたが、気に入りの品は見付からず。スーツかネクタイならもっと後だと安くなるかも知れない、もう一回来ようと思う(浅ましい)。
 少し期待していたのはワインと器だったが、前者はそもそもセールしておらず、後者はセールしていたがぞっとしない品物ばかり。餅は餅屋に限る、か。しかしそう言ってしまうと、百貨店の存在意義はなくなってしまうわけである。しかし、更に翻って考えれば、百貨店という形態ではイケなくても、スーパーだの大型量販店だのといった店はむしろ《勝ち組》(さもしいことばだ)なのである。素人さまの我が世と謳う時代、いずれにせよ専門店は生き残っていけないのか(残っている専門店は、質の良いものを丁寧に商っている店が多いが、だからといってそういう店がつぶされずにやっていけるというわけでもない)。
 昼間からすっかり暗澹たる気持ちになって、仕方なく地下食料品街で、「進物解体セール」の焼き海苔を大量に買った(海苔が大好物なのである。ただし焼き海苔に限定)。
 阪急を出た後、まあめったにこないところなのでモザイクなどもぶらぶらしてみる。めったにこないのも当然か。白けることなのめならず。多分神戸ではいちばん気疎い一画ということになるんでしょうな。
 帰りはコーナンで日用品を買い、ついでにペットコーナーでドジョウ二尾も購入。家にはシマドジョウが一尾いて、こいつはもう六年ほど生きている大長老なのだが、次々に仲間が死んでしまって寂しそうやな、と勝手に考えて入れることにしたのである。
 間抜け面のドジョウが三尾、こちらを向いて並んでいる姿は、実に愛敬があってよろしい。
 夕食はジムの前に済ませ、帰ってきた後は焼き穴子(ドジョウを鑑賞しつつアナゴを食うのも風流なものです)のとろろ(大和芋)かけと、焼き海苔と酢茎で一杯やりながら、テレビの『人情紙風船』を愉しむ。こういう古い映画をじゃんじゃん放映してほしい。前はフェリーニを二日続けてやっていたが、『魂のジュリエッタ』みたいな凡作より、『そして船は行く』をやるべきである。と熱燗が効いてきたアタマで力み返る。

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