歳末御礼

 公私ともに、心身ともに散々な一年でしたが明くる年もなんとか続けて参ります。

 御高読まことに有難う存じます。皆様良いお年をお迎えください。

○『キリスト教文化事典』(丸善出版
○アダム・フェルナー、クリス・メインズ『世界を変えた150の哲学の本』(創元社
○磯部久生『赤間茶屋「あ三五」そば歳時記』(花乱社)……蕎麦の実(剥き蕎麦?)はけっこう和え物の具に使えるのですな。やってみよう。
仲正昌樹ニーチェ入門講義』(作品社)
○平田聡・嶋田珠巳『時間はなぜあるのか?』(ミネルヴァ書房
○君塚直隆『イギリスの歴史』(河出書房新社)……暢達で読ませる。とくに素人にはなんともややこしい中世史を綺麗に語ってくれてるのが有難い。
クリスティアン・ルドー『世界史を変えた独裁者たちの食卓』上下(村上尚子訳、原書房
○ダン・ジョーンズ、ダコスタ『十字軍全史』(吉村花子訳、河出書房新社)……これも読ませる。イベリアのムスリム君主やビザンチンの皇女など十字軍《周辺》の群像にくっきりと照明を当てることで逆にこの歴史事象の見えざる力学を浮かび上がらせている。
○チャールズ・スティーヴンソン『世界の城の歴史文化図鑑』(村田綾子訳、柊風舎)……ひとり酒のアテに最適。
丸谷才一『無地のネクタイ』(岩波書店)……集中の一編を確認したくて書庫を探し回ったけど見つからず、Amazonでポチりなおす。内容を覚えているのに現物が無いとはどういうことだ。※丸谷エッセイ・批評集はあとから書名など参照することが多く、図書館では借りない。
○岸本尚毅編『室生犀星俳句集』(岩波文庫
○吉田夏彦『論理と哲学の世界』(ちくま学芸文庫)……集合論がここまでの拡がりをもつとは。入門書だが射程は深い。
椎名誠『新装版 武装島田倉庫』(小学館)……一応SFには分類されるんだろうけど、ジャンル小説ではない。終末後の世界を、にも関わらず「生きる」あり方をじつに粘り強く定着させている。この沈着な文体でこの世界を創造するのはさぞかし骨が折れただろう。
アラン・ムーア、ジェイセン・バロウズ『ネオノミコン』(柳下毅一郎訳、国書刊行会)……アラン・ムーアラヴクラフト神話。もちろんコミックなのだが、柳下毅一郎の超絶訳が無ければ成り立っていないという不思議な本。
○ロナルド・ファーバンク『足に敷かれた花』(浦出卓郎訳、彩流社
○川野茅生『月面文字翻刻一例』(書肆侃侃房)……後輩が絶賛してた。引き締まった文体。幻想文学はこうでなきゃ。
○ヴィンケルマン『ギリシア芸術模倣論』(田邊玲子訳、岩波文庫
藤田覚『インテリジェンス都市・江戸 江戸幕府の政治と情報システム』(朝日新書)……学生時代にさんざん付き合った『甲子夜話』や『よしの冊子』(前者はお大名の随筆、後者は風聞集)など、すべて情報という視点から見ることが出来るんだな、と納得。同時代のロンドンやパリのコーヒー・ハウス、カフェ(またはサロン)と比較して語ってくれる物書きはいないか。
阿部昭『新編 散文の基本』(中公文庫)……独断だけど明晰。小説家の批評はこうでないと。芥川は文章を味わえ、と言われるとナルホドと思う。
押井守『ゾンビ日記』1・2(角川春樹事務所)……全く生者を襲わず、ひたすら歩き回るだけというタイプのゾンビというのは面白い。面白い、というのは思考実験のネタとして面白い。襲うゾンビよりよっぽど《死》の重圧がキツいんだろうなあ。ともかくも、Netflixもアマプラも、もっとどんどんゾンビ映画供給してくれっ。
○デヴィッド・サウスウェル, グレイム・ドナルド『「図説」世界の陰謀・謀略論百科』(内田智穂子訳、原書房
小林信彦『本音を申せば 日本橋に生まれて』(文藝春秋)……シリーズ最終巻。おつかれさまでした。
恩田陸『月曜日は水玉の犬』(筑摩書房

中野三敏先生を偲ぶ会編『雅俗悼辞』……一般販売している本ではないから、ここで取り上げるのは厳密にはおかしいが、造本・内容ともに充実しているのでひとこと。当方直接ことばを交わしたのは一度だけ。学会誌に投稿した論文へ下さったコメントが、簡潔ながら礼節に満ちたものだった。サンビン先生(と我ら門「外」生は呼んでいた)の温容就いて見るべし。中野学説の検討は、専家のみなさん、しっかりお願いしますよ。