夏料理

  久々に三宮の割烹『なが坂』に行った。前回は寒いさなか、予約もせずにしかも閉店にまもない時間に飛び込んだ。一月だからということだろう、お椀に花びらもちを模した趣向がこらしてあったのが嬉しかった。今回の献立は以下の如し。

  先付 胡麻豆腐、甘海老、生雲丹、蓴菜
  八寸 なんばの寄せ揚げ、焼き茄子の生ハム包み、八幡巻、楊桃、出し巻玉子、枝豆、花丸胡瓜とくらげ
  造り 鯛、生蛸、胡麻鯖  あと野菜(芽葱、大根、人参、大葉)の海苔巻
  椀  牡丹鱧
  焼物 鯛のかぶとやき(塩ではなく薄い醤油味)
  冷肴 茶碗蒸し、オクラのすりながし
  油物 穴子、獅子唐
  飯  松前寿司、紫蘇巻

  楊桃はゼラチンで固めるとか焼酎に漬けるとかして色々使えそう。どこで売っているんだろうか。なんば(玉蜀黍)も芸もなくゆでたり焼いたりするだけでなく、こうして粒をはずしてまとめたほうが香りも食感も楽しめるな、とこれも発見。自分ちでお客をする時の「夏料理」の一品に採り入れましょう。

  荷風がどこかで、日本で一番季感をおぼえるのは夏(の夕方)だと言っていた。そう言われてみると、晩秋よりも早春よりも抒情性にとんでいるような気がしてくるのはやはり抒情と感傷の詩人ならではの喚起力のせいだろうか。料理もそうかもしれない。というのは、冬はともかく熱い物を出せばそれで恰好がつくけれど、いくら夏だからといって冷たい料理ばかりだすわけにもいかず、冷たくはない一品をだして涼しさを感じさせるためには、まさに風情の演出に拠るしかないからである。作る側からすれば大変だが、やりがいはありそうだ。もっともその苦心をくんでくれる客がいてこそのはなし。

  とつらつら献立を思案するにつけても・・・・それにしても暑い。夏の休暇では、①郷土の食材と調理法を存分に採り入れた割烹がある②祭りなどのイベントがない③海か川か水族館か、いずれかの「水」に近い、の3つの条件を備えた街にいきたいな。