我が愛しのミナミ

  家に帰ってみると、何本かある水槽のうち、ミナミヌマエビだけを飼育しているところで稚エビが孵化していた。糸くずのようで、見えるか見えないかの大きさながら(虫眼鏡でのぞいてみると)くりくりといっちょまえの目玉が付いているのがかわいらしい。

  こどもながらにあちこちを泳ぎ回ってはせっせと何かを食べている。ブリーディングを目的に飼っているわけではない・・・ありていにいえばいたって無精な飼い主なので、稚エビといえど特別な餌(ブラインシュリンプなど)は与えていない。せいぜい水温が上がりすぎないことと、水が汚れないように気をつけるくらいであとはまあ、ほったらかし。それでもウィローモスのマットの上でなにやらはむはむはむはむしているのは健気といおうか。

  幼な子たちの生誕を祝って、今晩は少しだけ豪華な晩餐となった。献立は以下の通り。

  ・ホタテ(缶詰)と大根(千切りして水気をしぼる)と炒り卵の和えもの(今日は柚子胡椒と酒、薄口醤油で。胡麻油と酢と胡椒の中華風もおししいです)
  ・茄子と茗荷と海老(稚エビではない)の味噌炒め
  ・茹でタンのシェリースパイス風味(大好きなクレソンをわんさか添える。添えるというよりクレソンの中に牛タンが埋もれるくらい。クレソン、バルコニーで栽培できないかな・・・ご存じのかた、ご教示を乞う)
  ・うざく(うなぎは白焼き、あとは胡瓜と大葉と切り胡麻、わさび)
  ・豆腐とトマトとブロッコリーの酢辣湯
  ・もずくと長芋の梅酢和え

  例の通りメシは食わず。よく冷えたビールと白ワインと赤ワイン(スペインのシラー。これもそこそこに冷やす)で。対手はカルヴィーノの『見えない都市』。秘蔵の酒やチーズを出し惜しみするように、ちびちびと味わいながら愉しむ。酔いのせいか、こんな都市は前読んだとき出てきたかいな・・・といぶかしむこと一度ならず。

  これはあれだな。カップヌードルだな。と心の中で呟いたのは、弟のことを思い出したからで、食べるのが遅かった弟は小さい頃、カップヌードルを食べるといつも、食べるより麺が汁を吸い込むほうが速くて「食べても食べても減らない」とびいびい泣いたものであった。そんなふうに、読んでるうちに、どんどん内容が増えていつもまでも終わらない、そんな本があればいいのだが。