前夜祭

  京都に紅葉を見に行った同僚によれば「まだ全然」とのこと。夜はさすがに冷えるとはいえ、まだ気温高いものなあ。来週末あたりから見られるようになるか。奈良にでも行くべいか。でも人多そうだからな。

  その同僚曰く、「朝見た時よりは夕方の帰りがけに見た時のほうがわずかに色が濃くなっていたような」。んなアホな。と笑いつつも夕闇のそこここにしずもる紅葉を思い描いていい気もちになっている。そこで一句。

  夕闇の一はけぶんや薄もみぢ

  さてこちらも仕事を終えて夕刻。明日は健康診断、しかも風邪気味。こりゃ呑みに行かずばなんとせう。と三宮に飯を食べにいく。

  ワインは繊細で華やかなブーケの…は今日は鼻が利かないのでもったいなし。なんかどーんとパンチのあるやつ、と注文する。

  万願寺と生ハムのソテー(生ハムの炒めた香りは菜の花にも合いそう)、京芋とフォワグラのガレット(東海林さだお風にいえば、フォアグラのあぶらが染みた芋がうまぐでうまぐで)、そして本日の秀逸!ビスクのパスタ(パスタはちょっぴりにしてもらう)。海老やら蟹やらの殻の出汁に、もちろんミソをたっぷり。ソースの一滴一滴からむせかえるくらい海の匂いが立ち上る。前に食べて旨かったので、来るたびにシェフにせっついていたのだ。二皿とれるだけのソースを煮詰めてくれた、とのこと。多謝多謝。

  現金なもので、これですっかり風邪はふっとんだ気分。呑み屋にいくと、たまたま友人が退屈そうな顔でグラスを弄っている(店がつまらない訳にあらず。日曜日の夜更けに呑むのにはこうした表情がうってつけなのである)。焼酎のコーヒー割りなる奇天烈なものを付き合って、三宮の裏事情や噂話を色々きく(そーゆー方面に詳しい男なのです)。面白かったがここでは書けない。

  帰途は歩き。鯉川筋から上がって神戸山手女子大の東側を通るコースが気に入っていてよく通る。神戸の坂道には珍しく左に弧を描く両側に、いかにも裕福そうな屋並が続く眺めはいつ見ても気持ちがゆったりする。明日は朝から健康診断なのであまりゆったりしていてもいけないのだが。