秋の献立

  素人料理(自炊のこと)ばかりでは舌がなまる。いい季節なので『紀茂登』に行く。料理は以下の如し。

先付 天然舞茸、大黒しめじ、神戸牛、フォワグラのあんかけ、菊花山葵(志野の坪)
飯蒸 穴子、栗、銀杏(染付)
椀  車海老真蒸、松茸(菊花椀)
造り 鯛、つばす(あぶって)、烏賊、雲丹(緑釉皿)
八寸 とんぶりとろろ、渡り蟹酢の物、椎茸菊菜柚子のお浸し、鴨ロース塩焼きと揚銀杏、黒皮茸とマッシュルームのブルーチーズ和え、魚すり身のカステラ風
揚物 甘鯛、海老芋、万願寺(白磁?金粉のような模様が散らしてある)
炊合 湯葉、かぶら、蒸し鮑、柚子
肴  鮎の子と白子のうるか
飯  鰆幽庵焼、香の物(山芋醤油漬、白菜)、汁(鱧松)
菓子 栗金団、葡萄マンゴーキウィのジュレ、杏のジュース、メープルシロップのブラマンジェ
抹茶
 
 酒は「鷹勇」から「秋鹿」、最後は「天狗舞」。

  このうち、渡り蟹酢の物、鴨ロース、揚物(甘鯛のうろこが香ばしい)、うるか、そして鰆がとくにすばらしかった。焼き物としてもっとどーんと出してほしいのに、とご主人にいうと「一人で焼き物を二品(つまり飯のおかず以外にということ)は手が回らなくて」とのこと。金団もよかった。栗一個の大きさだが(上に小豆餡)、どれだけ栗を使っているんだろうと思わせるほど栗の風味満点の菓子だった。肴でいえばうるかのように、食材の精髄が一口の分量に凝集している。

  ヒントも多々得ましたよ。きのことチーズとの組み合わせが酒に合うとか、つばす(どちらかといえば苦手な魚)をあぶると思いの外豊潤な香りがたつとか。

  次は十一月末に予約を入れた。甘鯛はまだはやいかな?鶉は出るのかな?と今から期待がふくらむ。どうかミシュラン族でわんさかとなっていませんように。今日にしてすでに、奥の席から聞こえるような大声で「ビールもう一杯ください」(酒を呑め!)だの、椀を片手で持って飲み干したりだの(コップ酒か!)、あったのでやや心配。