卯年は卯酒で

 皆様に謹んで新年のお慶びを申し上げます。本年も、兎のように飛んで跳ねて・・・とは参りませんが、亀とすら競争する気のてんでない暢気者とのお付き合いを願わしう存じます。

 では吉例腰折れ三首。

 癸卯
福来ねとかへす手みずの音うかれ耳に長くもひゞくもち月
 兎噺三題
かちかちと時計をよそに茶をすゝり昼寝する身に卯きことぞなき
 海辺にて
呑みていなば後の勘定白なみとがま口の中おほくにもなし


 年ごとにお節を「リストラ」していって、今年は雑煮の他、なまこと煮〆と田作りだけとなった。「飽きずに呑めて、味が変わらないもの」という基準。鯖の生ずしは無論呑めるのだが、年末はあほほど高くなるし、浸かりすぎて堅くもなってしまうので省略。

◎なまこ……たしか『京味』西健一郎さんの本で知った、《ゆりなまこ》という技法。なまこに塩を打って、ひたすらザルでゆする。粘液を洗ってまた塩してをひたすら繰り返す(重労働)。紙の如くひらひらにしただけの例年のなまこよりもっとさくさくしている。その食感を失わないよう、二杯酢(柚果汁と淡口)および大根おろしは食べる分だけかける。
◎煮〆(一)……蓮根・牛蒡・こんにゃく・海老芋・京人参・蕗・干椎茸。出汁は昆布・椎茸・青森は深浦の焼き干し。あとは酒・濃口のみ。
◎煮〆(二)……鱈の子・蕗・百合根・菜の花・蕗・兵庫えんどう。出汁は昆布と鰹。こちらは淡口。全部下茹でして(鱈の子は充分水にさらして)、炊くというより出汁を吸わせる感じ。
◎煮〆(三)……慈姑。糠で下茹でし、鳥手羽の出汁と紹興酒オイスターソース、濃口・ちょっぴり砂糖でこっくりめに。

 酒はいつもの黒松剣菱の他に、初孫を二種。大学生になり、最初に覚えた地酒(近所の酒屋にたまたま置いてあった)。もう干支も四巡を終えたことだし、一旦昔の味に還ってみるのも悪くない。とかいいながら二日目はワインを赤白泡とがぶがぶやってたんですがね。

 

※今見返したら、十二年前の正月にも同じ題名で同じような記事書いてたわ。呵呵。