2011-01-01から1年間の記事一覧

天空の芙蓉

週末は生まれて初めての静岡。ただし出張でいったので、特に観光はせず。 印象に残ったもの。桜海老の掻き揚げ。静岡おでんの黒はんぺん。上方育ちの人間として、ちくわぶだのはんぺんだのといった食品には漠然たる軽蔑?悪意?を持っていたが、この黒はんぺ…

天空の芙蓉

週末は生まれて初めての静岡。ただし出張でいったので、特に観光はせず。 印象に残ったもの。桜海老の掻き揚げ。静岡おでんの黒はんぺん。上方育ちの人間として、ちくわぶだのはんぺんだのといった食品には漠然たる軽蔑?悪意?を持っていたが、この黒はんぺ…

玉にはきず

三連休の前日、同僚と阪急京都線・淡路駅の『千成寿司』に向かう。お目当ての蝦蛄が無かったのを微瑕として楽しく呑み、かつ食らいたり。アテは以下の如し。 胡瓜醤油漬け、鱸、丹後鳥貝造り(生)、蒸し鮑(徳島産と長崎産を一切れづつ)・鮑肝、このわた、…

幸福の探求

筒井康隆さんの『漂流 本から本へ』(朝日新聞)は、かなり反響をよんだ連載だった。こちらも本好きとして毎回楽しみにしていた。自分が知らない名作を教えてもらうという実利的な側面もむろんあるけれど、一冊一冊の本の内容が過去、とりわけ少年時代の記憶…

神は細部に宿り給う

用事を済ませて三宮から家に帰るさ、入ってみた料理屋がちょっといける所だった。 目板鰈の造り、雲丹とろろ、チーズの味噌漬、アスパラの天ぷらで呑んだあと、骨蒸しを頼んだところ、出てきたのは大鉢からなおはみ出そうな鰆の頭。顔つきは獰悪である。身は…

文庫の本分

老舗をほめるのは藝がないともいえるけれど、今月の岩波文庫のラインナップは見事というしかない。早速三宮のジュンク堂におもむいて、『柳宗元詩選』『幸福の探求』『失われた時を求めて2』を買う。(ボルヘス『七つの夜』は単行本で持っている。) 柳宗元…

そして鯨飲馬読。

《マラソン》三日目。朝から無性にポーの小説が読みたくなり、創元推理文庫の『ポオ小説全集』に淫する。くたびれると、アンドラーシュ・シフのバッハ(ライプツィヒバッハ音楽祭)を聴く。「アルンハイムの地所」を読んで、そういえばあの本にポーについて…

昼読夜読

《マラソン》二日目。極上の晴天なので散歩がてら買い物に行く。職場へ向かう道の途中に桐の木があり、この日見ると花を付けていた。綺麗だが、こんな青空の下で見るとなんだか間が抜けている。次の雨までは保たないかな。 この日読んだ本。エドウィン・コー…

晴読雨読

四連休は久々だったけど、今回は旅行せず、家にこもると決めていた。 録画したまま見てない番組や積ん読の本などを「滞貨一掃」するつもりなのだ。 手始めはテーヌの『英国文学史 古典主義時代』(白水社)。何かにつけ自国フランスを持ち上げるフランス中華…

人はなぜ大樹の陰によるのか

日曜日、元教え子のまる。夫妻と三宮で昼食。しばらくぶりにタイ料理『バーンタイ』に入った。汗をかきながら烏賊の炒めたのや海老の春巻などを食べる。そのあとは『マリアージュ・フレール』でお茶。お互いの仕事のことなどを話す。奥様は今度『アタック2…

パスタから漢詩へ

職場がえりにのぞいたスーパーで「生タリアテッレ」なるものを発見。旨そうなので買って帰る。一日目はオリーヴ油に大量のパセリ、パルミジャーノ。二回目は(四食入り)槍烏賊と浅蜊を軽く煮たトマトソースで和える。 旨い。旨いけど、も一つ「決まった!」…

うすむらさきの思ひ出ばかりは・・・

我が家から南に下っていった道沿いに流れる宇治川は、川辺の桜並木も有名だけれど、実は知る人ぞ知る藤の名所でもある。 といっても住宅地の中のこと、藤棚があるわけではない。道のフェンスに藤を這わせており(自然になったのではない、と思う)、だから目…

一年たちました。

掘り出しの古本をめっけただの、市場で魚が安かっただのという記事ばかりでどこまで保つんかいな・・・とは書いてる本人が一番懸念していたところである。 とまれこうして「鯨飲馬読記」が無事一年を迎えられるのも、読んでくだすっているみなさんのおかげ。…

ゆるい、春。

寒い時期は好物である魚が旨く、肴がよければこれまた好物の清酒もすすむ。今年はいつまでも冷える日が続くのをかえって幸いにしこたま呑み続けていたせいか、ここにきて「春」バテ。胃腸の調子がよくない。新年度にむけて、そうそう不養生ばかりもしていら…

隠れた古典 〜双魚書房通信④〜

高校生のころを思い出す。古典(漢文)の授業の担当だったやたらと眉毛の長いその教師は、『史記』の「項門の会」のくだりを、一切の解説ぬきでひたすら暗唱させ、すらすらといえないようだと丸めた教科書で頭をポカンとやるのだった。 今ならこんな無茶な教…

四百年続く和菓子の家 〜双魚書房通信③〜

美しい本である。中に収められた季節ごとの和菓子の写真もさることながら、語られる内容そのものが、美しい。 語り手である山田和市さんは約四百年(!)つづく京の干菓子司「亀屋伊織」の跡取り息子。和市さんのお父様で十七代目に当たるという。 「亀屋伊…

駅中の楽園〜金沢?〜

以前呑んだことのあるスナックの感じが良かったので、まずはそちらに向かう。地図を見ても迷う男がこういうときは足に任せると、ぴたりとその店についてしまうのだから不思議なものである。 当然ながらボトルは流れてしまっているが、すぐに「神戸から来た、…

川沿いの壺中天〜金沢?〜

花粉症なのだが、これまで飲み薬は用いたことがなかった。そのせいだろう、家を出るときに飲んでみると、なるほどくしゃみも鼻水も目のかゆみを嘘のようにぴたりと止まり、おかげで上上吉の旅のすべり出しといいたいところだが、効果覿面なのは副作用もおな…

この気まぐれな暴君

先日テレビで、海洋冒険家の白石康次郎氏が語っていた。ドビュッシーの交響詩『海』が好きだという氏がその理由としてあげていたのは、「海は冷たくきまぐれで残酷な存在だと示している」ということだった。 明治から昭和にかけての作家・幸田露伴に、「水の…

シフのベートーヴェン

アンドラーシュ・シフのリサイタルを聞いた。プログラムはベートーヴェンのピアノソナタ3曲(op109ホ長調、110変イ長調、111ハ短調)。 この3曲にop101イ長調、op106変ロ長調「ハンマークラヴィーア」を加えたベートーヴェンの後期ソナタ群は、数あるピア…

ペンよく人を誅殺す 〜双魚書房通信②〜

『罵倒文学史 19世紀フランス作家の噂の真相』(アンヌ・ボケル、エティエンヌ・ケルン/石橋正孝訳/東洋書林) 《十九世紀の中葉から二十世紀初めにかけてのフランス文壇の消息を、人物関係に光を当てて活写した文学史。》 うーん。これではイカニモ読み…

ひな料理

独身男に桃の節句は関係ないというなかれ。少なくとも飲み食いという観点からする限り、私見ではひな祭りは端午の節句に優ること数等、というよりお話にならないのである。五月五日ときいて連想される食べ物などない・・・・といいたいが、まあ柏餅があるの…

エーコの『テンペスト』双魚書房通信①

正月は酒の相手に、U.エーコの新刊『バウドリーノ』上下を堪能した。小説2作目の『フーコーの振り子』、及び3作目の『前日島』はやたらと凝りすぎていてあまり楽しめなかったが、今回は違う。世界を驚かせた『薔薇の名前』の昂奮が存分に味わえる。刊行…

お知らせ

百年に一度の不景気やら、ジャスミン革命やら、温暖化やら、何かと憂わしい世界の雲行きにも関わりませず、極楽とんぼもきわまりない当『鯨飲馬読記』をお読みいただいている皆様、書き手としてはまことに感謝に堪えません。 さて、タイトルどおり呑んだり読…

神あまたみそなはす国

近江についてみると、雪はほとんど無く皮肉にも神戸より気温が高いくらいだった。 朝目覚めると窓から入ってくる光がなにか違う。ひょっとしてと窓をあけてみると一面の雪。神戸(家は兵庫区)では今年初めての積雪になる。 以前書いたことだが、《寒冷》好…

日本的風景

午前 いつものように六甲に湧き水を汲みにいく。三つある湧き出し口の二つは涸れてしまっている。この冬、記録的な豪雪にたたられた北陸・東北とはちがって近畿ではほとんど雪が降らず。降水量は平年の1%もないところさえあるらしい。夏の渇水が心配。とま…

生々流転

退勤時間をまちかねるように、カバンをひっつかみ、電車に飛び乗る。 行き先は、さんちかホール。古書市の初日なのである。会場が閉まるまであと一時間足らず。しっかり見て回れば二時間くらいはかかるはずである。そこで、作戦をたてた。文庫・雑誌の類は一…

寒波の明暗

商売繁盛の神であるエビスの祭り(一月中旬)のあたりは、皮肉なことだが、もっとも商売が暇な時期だという。まして、今年のような記録的な寒波が襲来していたら、食べ物屋はすっかり冷え込んでいるのでは・・・と思いきや、きくところによると意外とそうで…

卯年の卯酒

皆様あけましておめでとうございます。本年もあいも変わりませず、読んだり呑んだりのお話をお届け致します。 で、さっそくながら正月の献立。 煮物は煮染め(海老芋、こんにゃく、牛蒡、人参)と炊き合わせ(鯛の子、百合根、高野豆腐、絹さや)の二種。 生…