日記

あまくち からくち

南瓜が安かったので久しぶりに炊いた。 一度書いたが、夕飯では主食のたぐいを食べないので、どうしてもごはんのおかず的な献立は少なくなる。コロッケやカレーは数ヶ月にいっぺんも作るかどうか。そもそもおかず的な味付けが苦手。豚キムチと肉じゃがと豚生…

精霊流し

ご承知の通り、不急不要の文章を旨としたブログだから、そうそう書くことがあるわけでもない。それにしても八月は仕事柄ばたばたすることが多いので、多少興が動いたときでもキーボードに向かうのが懶く、ついそのままに流れてしまった材料も少なしとしない…

質問ふたつ

このブログを読んでくだすっている方おふたりから次のような質問を受けた。 ?なぜ呑んだ話と読んだ本のことしか書いていないのか。→・・・。 ?なぜ画像を出さないのか。→いろんな意味で意地をはっています。スイマセン。

デパ地下の吸血鬼

四万六千日はとうにすぎましたが、お暑い盛りでございます。 ただでさえ二日酔いは辛気くさいものだが、暑いさなかの二日酔いはよけいにこたえる。名著『酒について』を書いたキングズリ・エイミスは、二日酔いを身体的/形而上学的と分類していたが、たしか…

南極の酒

「美食の不幸」でも書いた懐石の店「S」でお昼。昼飯とはいい条、休みなのでむろんのこと酒は想定の上。まず例によって献立を記せば、以下のごとし。 先付 生雲丹、生湯葉、山葵、加減醤油 木盃で一献 椀盛 牡丹鱧、焼茄子、三度豆、吸口青柚 造り 鱸、鱧(…

烏賊と鱧とプルーストと

一緒に呑んでいても、一定の酔い加減になったら、飄然とかつ決然と帰ってしまう人がいるが、今年の梅雨明けはそんな感じでした。 シーツからソファのカバーから全部洗濯し終え、凛然として東山市場に向かう。活けの蛸が無いかな、と思って見て歩いていたとこ…

神も仏も

明日から祇園祭が始まる。 といっても京都の八坂神社ではなくて、家のすぐ近く、兵庫区平野にある祇園神社のことを考えている。 社伝によれば、牛頭天王の神託によって、播磨広峯神社に祀られる素戔嗚尊の分霊を都に迎えることになった。広峯から分霊を奉戴…

果てしない物語

不思議な、浄福感に満ちた夢を見て目ざめ、「ああ」と思った。 この「ああ」は「ああ、やっぱり」の「ああ」である。 前日にスティーヴン・キングの『悪霊の島』上下を一気に読み上げていたからだ。と藪から棒に言われても何のことやら理解していただけない…

魚恋はば魚あやむるこころ

めりはりのきいた梅雨だ。土砂降りかと思えば翌日は朝から晴天だったりする。 蒸し暑くても雨降りよりはましだ、と水槽の掃除をすることにした。魚は食べるだけではなく、実は鑑賞するのも好き(ブログ表紙の熱帯魚はそういう意味合いなのです)。 ガラス表…

あるバーの話

煎茶で烏賊を炒めてみた。 烏賊はあおり烏賊。一口大よりやや大ぶりにきって、味がのりやすいように切り込みを入れて、酒をふりかけておく。足は別に使う。 鷹の爪・生姜のうすぎりをいれた油を熱し(茶の香りを消さないように、ごま油は避ける)、煙が出た…

他流試合

蒸し暑い。 芸のない書き出しだが仕方ない。こんな日は焼き鳥食って元気を出すに限る。寒くって乾燥していても焼き鳥なのだが。 仕事のあと、東淀川の「圓」に出張。この日は鴨がとくに旨かった。酒は「辨天娘」の槽(ふな)汲み・荒ばしり。玉色に薄く濁っ…

雨夜の品定め

呑み友達三人を拙宅に招いた。 誕生日に多機能ホットプレートをプレゼントしてくれたので、今回はそれをつかってのジンギスカン鍋。 「超稀少!」と銘打った北海道産ラム肩ロースはいささかの臭みもなく、いくらでも食べられる。サイドメニューはシーザーサ…

梅雨じたく

朝から快晴。休みだが早起きして洗濯機は回しづめ。シーツも布団カバーも中敷きも全部洗ってしまう。 昼からは元町で買い物。例のごとく海文堂に寄ってみると、こんどは(記事「もとぶら」に既述)「ロシナンテ」という古本屋の「蔵書一挙放出」セールなるも…

美食の不幸

生まれた大阪もけっして水はいいところではないが、神戸に来て、水道水のあまりのあまりさにびっくりした。さいわい灘区に住んでいたので、少し探すと湧き水が見つかった。まさに「六甲のおいしい水」。兵庫区に越してきた今も、一月に一度は、大学の後輩に…

たまには短く

週末は出張で、福島県郡山市に行っていた。関西とはまず植生がちがう。楡や欅や樺の木が多く、こんもりもっさりした楠が中心の神戸と比べると、町の感じがずいぶんすっきりしている。 駅前の繁華街を抜けたところに安積国造神社がある。幕末の儒者安積艮斎は…

文武両道

神戸は、紅茶の消費量が日本一多い街だそうな。紅茶好きとしては慶賀に堪えないところである。 「鯨飲」とタイトルにはうたっているが、酒と同じくらいのお茶好き。紅茶だけでなく日本茶もふだんづかいのほうじ茶、食事用の玄米茶、もちろん煎茶、時間がある…

片道千円の旅

朝鮮通信使が恍惚とし、かのシーボルトが絶賛した瀬戸内の海は、前日からの大雨と風で黄土色に波立っていた。 まあ、おかげで他の観光客も無し。 久々の三連休だからどこかに行こうと思い立ったものの、思い立って金沢や長崎に行けるものでもなし、片道千円…

樹影譚

今日は休日。朝から晴天。 ですが、事情があり、怏々として心楽しまぬまま朝食の食卓につく。 浮かぬ顔には不釣り合いに献立は豪勢で、ほうぼうのちり鍋と真魚鰹の幽庵焼。ウドの胡麻酢和え。昨日、スーパーでほうぼうが五尾で498円だった。いくら旬は終…

病める富士

誰も他人の病気の話など聞きたくはないだろう。当方にしても、『馬読』と掲げながら、病中随筆めいた本ははなからごめんこうむりたいクチである。 今日は病気の話です。年二回の健康診断の結果が帰ってきたばかりなのである。これがまあ、血糖値も中性脂肪も…

二つの全集

今日(休日)の朝食。きんつば二つ。 昼はオムレツとワイン一杯。 前衛的な献立でしょう。昨夜から読み始めた本があまりに面白く、米を研ぐのも面倒で読みふけっていたからだ。メイン・ディッシュは『一海知義著作集』(藤原書店)第二巻と『定本久生十蘭全…

桃の花咲く村

折からの雨。連休明けの午前。 絶好の悪条件だなあと、えびす顔で石畳を踏んで歩く。近づくにつれ足取りが速まるのが、規則正しく敷かれた石畳の過ぎゆくテンポに見てとれて、我ながらおかしい。何も急ぐことはないぞと言い聞かせて道の向かい側の崖を見れば…

もとぶら

連休だけあって、元町商店街は昼前から観光客でいっぱいだった。 みなさん、どうぞ神戸でお金を落としていって下さい。 さて、地元の人間が混むと分かっているところに出かけたには訳がある。元町にある海文堂(素晴らしい書店)で古本市が開催中なのだ。ち…

川のある町

昼過ぎに起床。一点の非の打ち所のない宿酔い。 こういう時、どうするか。 嘆息ひとつ、そのまままた眠り込むのが普通だろうし、またそれが一番有効な方法なのだろうが、シャワーを浴びて、歩いて半時くらいの東山市場まで買い物に出かけることにする。 石川…

横丁の楽しみ

路地と路地にある社が好きだ。 路地の社だから、鳥居に本殿とものものしくかまえたのではない。日本文学史上最高の“散歩の達人”永井荷風が『日和下駄』の「淫祠」で礼賛した類、である。 一昨日、歩いて職場に向かっている途中、ふと目を向けた横丁がなんん…

羽化登僊

給料日の金曜日、東淀川の「とりや 圓」で飲む。 もともと焼き鳥は大の好物だが、ここの焼き鳥はどれを頼んでも本当に旨い。脇のメニューの野菜もよい。酒も吟味している。 いつもは日本酒をえんえんと呑む。この日は違った。店主のすすめで前衛的な(?)あ…

Polarisation

一雨降って急に春先、というよりは冬のような寒さ。野菜の高直には困るが、大喜び。寒さ好きなのである。日本の詩人では、《極北の詩人》吉田一穂が贔屓なのは、ひょっとして単なる生理的な嗜好を投影しているだけなのかもしれない、非文学的な読み方だなと…

旧師のポルノ

本はいつのまにかなくなってしまうものだ。 先日、仕事の休憩時間に、元町の古本屋に立ち寄ったが、結局買ったのは以前買ったはずだけど、今家に無いことは確実で、でも行く先知れずというものばかり。 手元を離れた自分の本を、巡り巡ってまた自分で買うこ…

味噌カツの曙

昨日お客をした。 なんだか年中お客をしている家のようだが、引っ越ししたてはこんなもの。 前の二回は洋風の献立だった。しかしこれはいわばアウェーの試合で、毎日作るのは和食のみ。しかも今回のお客様は30半ば〜40の男三人、かつそのうちの二人はメ…

リベンジ

日曜日もお客をした。お招きしたのは、引っ越しを手伝ってくれた大学時代の後輩。メニューは前の「観桜会」とほぼ同じ。前回行き届かなかったところを改善した(つもり)。山独活とホタテと苺のサラダが成功だった。三人でブルゴーニュの白1本とボルドー3…

花はさくら木・・・

昨晩は平野交差点角の「はんなり祇園」で飲んだ。職場から、夜桜見物がてらぶらぶらと川沿いに歩いているうちに俄然酒が飲みたくなったわけである。わかりますよね、このきもち。桜は夜桜に限る、と言いたい。ふだん目にするのはほとんどが人間ほどの寿命し…