2012-01-01から1年間の記事一覧

イルカたちの戦場

いやあ、北島康介さん、やっぱりすごいですねえ。前々日でも日本記録を二人が更新するという快挙もあって、ここしばらく水泳の日本選手権に釘付けという感じである。 スポーツを観戦するという趣味は自分からはいちばん遠いものと思っていたが、下手なりに習…

怪物の復権―『怪物ベンサム』〜双魚書房通信⑨〜

フーコーが例の本で華々しくというのも変だが、ともかく派手にぶちあげた結果、ベンサムといえばパノプチコンの発明者というのが通り相場になってしまった。 間違いはないが、それ以外の側面に関してはせいぜい「最大多数の最大幸福」という功利主義のスロー…

獨酌に対酌

久々に『山荷葉』(一年ぶり!)に行く。ご主人の板垣さんは変わらぬ笑顔で出迎えてくれた。献立は以下の如し。付 せんな(山葵茎)、白魚 椀盛 胡麻豆腐、あこう(?)、筍、三度豆、柚子、桜葉 造り 鰆、障泥烏賊 焼物 真魚鰹塩焼 八寸 蒸し鮑、甘海老酒盗…

雨と月とで葡萄酒を呑む記

二一世紀の日本で、白内障の治療技術がどれほど発達しているかはしらないが、ろくな麻酔も消毒薬もなかっただろうと思われる江戸時代に、ある人物の白内障を治してみせた医者がいた。その名を谷川良順・良益・良正という。見てわかるとおり三兄弟である。 杉…

ロマンチックなる酒

酒(これはアルコール入りの飲料という意味)はいつでも美味しくいただくが、酒(これは清酒を言う)はやはり寒いうちがいちばん風情があってよろしい。もうお彼岸前という時季でも余寒というかどうか、知らないがともかく暮れ方からの冷え込みに乗じて『播…

安曇野の孫行者―双魚書房通信かな?

旅行だなんだで先週はろくに読めなかった。夕食は牡蠣入り玉子焼き(葱を大量に入れる)とあんかけ豆腐で簡便に済ませ(この時はビール)、その後焼酎のお湯割りをちびちびなめながら積み上げていた本を片付けていく。 まずは竹内薫『科学嫌いが日本を滅ぼす…

芭蕉追跡〜山中温泉独吟の旅(その三)〜

加賀温泉から金沢までは普通列車でゆく。そのままサンダーバードに乗って帰神、という手もあるが、せっかくここまで来たのだからやっぱり金沢には寄って(逆方向だけど)行きたい。 といって、もう何度も来ているから格段ここをみたいということもない。ただ…

芭蕉追跡〜山中温泉独吟の旅(その二)〜

ともあれまずは一風呂。浴衣に着替えて浴場に向かう。露天風呂からは眼下に谷川を見下ろせる(くどいようだがここも敷地の内)。山はまだ冬木立のまま。三月初旬とはいえ、町中ではないのだ(仲居さんの話によると、今年はやはり気温が低いらしく、例年なら…

芭蕉追跡〜山中温泉独吟の旅(その一)〜

今回は長いですよ。ご用とお急ぎのない方はどうぞ。 目下連句に夢中になっていることは、このブログでも何度か書いたが、ついに芭蕉の跡をたずねて山中温泉まで行ってしまった。 というのは半分だけ真実で、残り半分は以前から心惹かれていた宿に泊まりたか…

書かない言い訳。

まだ寒の戻りはあるだろうけど、春一番も吹いたことだし、そろそろ冬の食材を整理しておかねばと思い立って、白味噌の汁を作る。 出汁は昆布のみ。具は粟麩と菜の花。煮えたところで丹念にアクをとる。食べるときには、汁でゆるくといた辛子を具の上にかける…

幻の梅

逸翁美術館の特別展示は惜しいことをした。呉春の「白梅図屏風」を見たいとかねがね思っていたので、今回の『2012早春展』はちょうどいい機会だったのだが、都合がつかない日が多くてずるずる過ごしているうちに終了。 しかしまあ、目をつりあげて勢い込んで…

芹の周りに

寒い寒いといいながら、やはり春だなあと思った。スーパーで、大好物の芹がかなり安くなってきておる。辰巳浜子によれば芹は「二月一杯」らしいのだが今年は名残どころか、そもそも走りの芹も見なかったような気がする。 さて、安いとはいえ貴重なこの芹をど…

長州返り討ち(3)〜天神拝んで狐に笑われ〜

『くじら館』のオバチャンに「まだ呑むのかね」と訊かれて、力強くうなづくと、二人で電話帳を見ながら飲み屋を調べ始める。やや心配・・・・でもここはご託宣に従いましょうか。 従ってよかった。地方の中都市のスナックでしょう、どうせ(下関の皆様、再び…

長州返り討ち(2)〜龍になった帝とクジラになったおっさん〜

前項目ではやけに力んでしまいましたが、当日は冬うららという言葉にぴったりの穏やかな晴天のもと、ひたすら楽しんで見て回りしのみ。秋田は男鹿半島の水族館GAOではハタハタ、大分の海たまごでは関サバというように、その土地の名物が一等いい場所をあ…

長州返り討ち(1)〜水族館のテツガク〜

大学・大学院で江戸のことを勉強していたから、というのもあまり論理的ではないような気もするが、ともかく心情的に佐幕派。勤王の志士ときくとげんなりするほうで、司馬遼太郎の作にしても、『国盗り物語』と『梟の城』以外は正直敬して遠ざけている(あき…

俳諧無茶修行またまた・坤の二

衣冠たゞして諫奏に出づ 碧 菜の花や配所の月もまる三年 桃 *諫奏した臣下が逆鱗にふれて流される。「罪なくして配所の月を見んこと」は風流の極致、前句の人物にしても不敬以外の罪はないから、ここで配所の月を出すのはある意味定石の発想。出るかなと思…

俳諧無茶修行またまた・坤の一

名残折表 飯盒に焦げし跡あり主や誰 桃 *初案では下五「ピクニック」。前句(「春の入り江にうろこ散りけり」)に穏やかに寄り添った、とコメントがあった。それにしては「主や誰」の問いかけが気になる。当然次はそれに答えないとならない。傳説となる敗殘…

隠居の小言

水泳のコーチが「今日は少しむつかしい用語を使って説明します」というので、多少は専門書読んで勉強しておかなきゃなあ、と思って聴いていると「水圧」がその「むつかしい用語」と分かってズッコケてしまった。 一時間ほど泳いで戻ってくると、新潮社から師…

俳諧無茶修行またまた・乾

師匠からもう一度歌仙のお誘いをいただいた(当ブログ「俳諧無茶修行 乾・坤」参照)。原稿のネタから三ツ物をこしらえ、そのまま勢いが付いたという事情のようである。下地は好きなり御意はよし、とばかり早速第四を詠み、メイルで送った。 まずは師匠の第…

かっこの多い文章

北野坂の『番鳥』でしこたま食べて呑む。先週、友人の誕生日で入った元町のさるおでん屋(お祝いにおでん屋というのも気がきかない話だが、ここは鮮魚も出すというので行ってみたのである)が、すこぶる感じの悪い店で(おでんも魚も神戸牛も揃えてゴザイマ…

裏側から見た日本史

冬の献立であまり鍋に頼りすぎるのも無精なようで気がさしますが、こんなに寒くてはねえ。本を読みつつ、酒を呑みつつ食べるんだから、鍋以外の料理だとすぐに冷たくなってしまう。 とはいっても、ずっとおなじ鍋でもつまらない。久々に酒鍋をして、これが旨…

冬ごもりに水涸れ

燈火親しむ秋でなくとも、これだけ寒いと外に出る(飲み歩く)気も萎えてしまう。こういう時こそ読書を楽しまねば。と意気込んでいても、しかし、肩すかしがあるのは人生に同じ。たとえば某という料理人が著した、会席の献立の作り方の本。カバーの折り返し…

葡萄島の死闘

弁当を作ってるついでもあるから、朝は飯のほうが手がかからなくていいのだけれど、パンを焼いて楽しんだ。理由は二つある。昨日、知り合いの方にブランジェリー・ナオの食パンをもらったことが一つ。知っている人は知ってますよね。新開地の、え、こんな所…

月に鳴く亀

最強寒波襲来の日、神戸でも珍しく雪が舞った。青森や新潟など雪害に苦しめられている地域の方々には申し訳ないが、都会の雪は風情がある。とくにめったに降らない雪を見て、街ゆく人が一様に弾んだ表情で空を見上げている、その風景が佳い。 さて、この極寒…

ハーバーのカモメは飛びもせず

久々に平日が休みだったので、用事ついでに近くの神戸阪急をのぞいてみた。ご存じでしょうが、三月に閉店するのでつねにセール中、という話を聞いたので寄ったのである。 ・・・うーん平日とはいえ、この閑雅なこと。服(ふだん着る物)はたしかに安くなって…

俳諧無茶修行・坤

わが子を先の釜の生茹で 燕 糟糠は粉物好きの夕餉かな 燕 *名オ一雑。前句の修羅場を、うどんを茹でる家庭団欒とした。糟糠は粉物好きの夕餉かな 燕 亭主は知らぬ通帳ひらく 碧 *名オ二雑。糟糠の妻は粉物で倹約しつつ、内証ゆたか。師匠が丸く収めた場の…

俳諧無茶修行・乾

昨年十二月、大学(院)時代の師匠のお宅で先輩方と歌仙(ただしくは半歌仙)を巻いたことはこのブログでも書いた(「連句百鬼夜行」)。その記事の最後にも載せた拙句を、年賀状にお礼かたがた書き添えたところ、師匠が脇を付けて下さった。以後、PCメイ…

時には散漫に。

仕事帰りにジムに行くつもりだったが、ふと気が変わって、同僚湘泉子、参甫子とともに東淀川「とりや 圓」に向かう。ここも考えてみれば半年ぶりだった。 焼き鳥は相変わらず旨かった。この日は蝦夷鹿のローストでシェリー(オロロソ)を呑んだのと、最後の…

献立の作り方

ふだん晩の食事に米粒の類は食べないが、「食べない主義(?)なのである」となっては窮屈なわけで、たまには酒を入れずに文字通りの晩「飯」にすることがある。あまり無いことなので、そういう時には気合いを入れて「ご飯のおかず」を作る。スーパーでぶつ…

天守にひびく旋律は・・・

鏡花は鍾愛の作家で、連休の時などに彼の長篇を寝そべって読むのは無上の快楽ともいえるくらいだが、今まで戯曲にはあまり馴染んでいなかった。これは読むのではなく観るほう。古い映画の『夜叉ケ池』(玉三郎と加藤剛?)くらいか。だもので、先日テレビで…