白飯天国

元々メシはあんまり食べないところに、すっかり麦飯になじんでしまって(軽くて香ばしくていいもんですよ)、コメを買ったのは一年ぶりとなる。去年の今頃漬けた沢庵を取り出すのに合わせたのである。からくて堅くてクサいうちの沢庵漬には麦飯よりやっぱり…

竹に虎

せめて一月に一度は更新するつもりだったけれど。 アレルギー性鼻炎から、急性副鼻腔炎。耳は言うに及ばず、目の奥、頬・顎、首筋とアタマの右半分のあちこちが痛く、大きな音や強い光がキツい。この間かかった耳鼻咽喉科、特に名は秘すが初めは竹数筑庵先生…

序文について

zoomで事前許諾も不要と知り、神戸大学国語国文学会のシンポジウムに参加してみた。『近世俗文芸の作者の〝姿勢〟[ポーズ]―序文を手掛かりとして』という。参加といっても、休みではなかったからデータ整理の作業を行いつつ議論を拝聴しただけ。この一文に…

夏との和解

あれだけ苦手だった暑さが多少許せるようになった。というより、冷房が堪える年齢になったのだ。あと一つ、高台の山際に引越したので、夏の盛りでも玄関と窓を開けていれば(雨さえ降っていなければ)、けっこうしのぎやすいという事情にもよる。えらく叙情…

衰亡記

トシとってだいぶアタマ悪くなったせいだろう、ここ一、二年で本を読む速度が著しく落ちた。久々の更新でこれだけしか高が上がらないことに慄然とする。また新書・選書の類が多いことにも我ながら辟易する。あれは「手っ取り早く情報を」という安手な感じが…

サバトからワルプルギスへ

大好きな町に三泊四日なんて瞬きの間のようなもの。新店開拓は今度二週間くらい滞在するときに回して(それでも足りるかしら)、ひたすら馴染みの店で食べる。よってこの日の夜は楢館向かいの『鮨 瑞穂』。 鯨頬肉(豪壮)や時知らずの粕漬け(しっとり)な…

朝飯天国

太平楽・極楽とんぼが身上の本ブログ、旅日記もそろりそろりと参ります。御見物様にはお茶煙草鮨弁当などお使いになってゆるーっと御覧下さい。口上左様っ。 初日Casa del Ciboの後はゆりの木通りの『酒BARつなぐ』へ。当方が愛読する八戸ブロガーさん達のこ…

北の河豚 果樹園の野菜

十三日町でバスを降りると、ニュースで見たとおり三春屋にシャッターが降りていて、「長年のご愛顧」云々の貼り紙が。当方、長年ではないけれど、八戸に来るたびに買い物を愉しんでいた。まあ、鯖ずし・ジュノハート・糠塚胡瓜・南部味噌などいわゆるデパチ…

土地の精霊

文楽四月公演第二部は『摂州合邦辻』。無論見せ場は合邦庵室なのだが、その前の万代池の段も良かった。「仏法最初」四天王寺という聖俗綯い交ぜの霊場の雰囲気、具体的には合邦の説法の猥雑さと零落の貴公子の嘆きとが一場のなかに自然と共存できる不可思議…

メランコリーの解剖

頭に霞がかかったようで気分も沈みがちなのは、第一に花粉症、次に八戸三春屋閉店のせいだけど(ホントに地下の食品売り場は良かった!)、海彼の干戈のうわさに因るところも少なしとせず。ふっと思い出したのが、林達夫の一文。「『旅順陥落』ーある読書の…

儺をやらふ

なんと三ヶ月ぶりです。年末年始は文字通りに酔生夢死、続いて八戸えんぶり中止を知って意気消沈しておりました。なんとか鬼を払って気分を励ますべく、今年は追儺の料理をしっかり作りました。 【其の壱】これはひとひねりした方。*福茶……昆布、山椒、梅干…

嵐のあと

九月には八戸でも、地区を限ってのことだが独自の時短要請が出ていた。今回は三泊。週末を挟んだ旅だったが、はじめて訪れたとき(たった三年前!)と比べても中心街の人通りの減少は歴然としている。余所者ながらにつらい眺め。とはいえ旅行客に出来ること…

わにとワクチン、お岩さま~九月雑纂

★たまたま週に二度、動物園に行った。一度目は王子動物園。二度目は天王寺。どうしても比べてしまうのだが、大きさで劣るのは仕方ないけど、我が王子動物園、もう少し展示に清新で動物も元気が出るような工夫が出来ないものか。天王寺は真上を高速道路、真横…

行く夏とは言わない

夏井いつき先生の『俳句ポスト』がリニューアルしてからもひとつ戦果がふるわない・・・・・・。 ○林家染丸『上方らくご歳時記』(燃焼社)○澤田瑞穂『中国史談集』(早稲田大学出版部)○ジェス・ウォルター『美しき廃墟』(児玉晃二訳、岩波書店)○野口冨士…

子鳩とブラックジャック

雲が垂れ込めるなか、上京の『仁修樓』へ。松坂木綿の縞物を着ていたが、店に入る頃には汗みずくになっていた。 一年ぶりということもあって、こちらからは「うんと。」とお願いしていた。その「うんと。」コース《紫美》は以下の如し。 (1)甜醤鰻魚捲(2…

蝉とフナムシとわたし~宇和島再訪(2)~

二日目は日振島の日崎海水浴場(こちらには名前がある)で泳ぐ予定をしていた。高速船の乗り場に行ってみると、ちらほら客の姿はあるものの、釣り竿を携えたおとっつぁんか、明らかに帰省途中の人ばかり。今日は日曜日で、晴れてて、海水浴場も閉鎖されてな…

おぼれてもひとり~宇和島再訪(1)~

「ああこの町にはもう一回来るな」と思いそしてブログに書いてから(「四国二分の一周② 宇和島~夢の街~」参照)、十年後の再訪は悠長に過ぎると見るべきか、それとも志操堅固にして有言実行(?)と見るべきか。 ともあれ新幹線・特急「しおかぜ」「宇和海…

うにときうりの祭~八戸旅日記(3)~

三年前(もう八戸に惚れ込んで三年にもなるのだ)、はじめて種差海岸に行った時は七月にも関わらず吹き付ける冷たい霧にこれがやませかと感銘を受けたのだが、今回はそれ以上だった。海を向いて一分も経たず眼鏡がべたべたになるほど、霧の流れがきつく、ま…

湊高台の一夜~青森・八戸旅日記(2)

朝から細心にチューンアップしてお腹が鳴るほどである。いざ『Casa del Cibo』。 この日のコースの内容以下の如し。 ◎トピナンブールのビスコッティに挟んだペリゴール産フォアグラのテリーナ・・・「トピナンブール」は菊芋のこと。ペリゴール産だから、あ…

森とみずうみのまつり~青森・八戸旅日記(1)

久々に青森市で一泊。ホテルに荷物を預けてすぐに橋本の『鮨処 すずめ』へ。ここははじめて。「はじめにアテで呑みます、その後でおすしを」。 《アテ》○烏賊の鉄砲煮○栄螺壺焼き・・・きちんと鮨やの壺焼きになっている。○造り・・・鰯の酢〆・大間の鮪(赤…

水無月盡

六月も終わりと気付いて慌てる。こうやって人は死に近づいてゆく。明日からは青森。 ○竹村牧男『唯識・華厳・空海・西田』(青土社)○ジーナ・レイ・ラ・サーヴァ『野生のごちそう』(棚橋志行訳、亜紀書房)○ジョージ・サルマナザール『フォルモサ 台湾と日…

魚菜記

ようやく水槽を立ち上げることが出来た。生体はアフリカンランプアイをメインに、透明系のカラシンとミナミヌマエビ。水草は、百二十センチに二十種類で、大概のアクアリストが憫笑されそうな、とりとめのない水景だが、もともとこちらが雑草が生い茂る原っ…

パン屋へ三里 豆腐屋へ二里

板宿暮らしにだいぶん馴染んできた。前のマンションは一人住まいを始めて最も長くいたところだったから、引っ越しして一月半でここまで来たのは随分早い。と思ったが、自分が馴染めそうな町を選んで移ったのだから、まあ当たり前ともいえる。 馴染めそうと感…

三月盡

宿替えのばたばたはまだまだ続いており、今回も三月終わりと気付いて慌てて書名を記すのみ。 ○母利司朗編『和食文芸入門』(臨川書店)○マーティン・ライアンズ『本の歴史文化図鑑』(三芳康義訳、柊風舎)○ロデリック・ケイヴ/サラ・アヤド『世界を変えた10…

春落ち着かぬころにもあるかな

新居への移転から始めたブログであるのだから、退去のことはやはり書いておくべきだろう。 売却から転居に至った経緯については憮然とさせられることいささかならず(借金で夜逃げしたわけではありません)。まあ、しかし自分の持ち物に我と処分を下した訳だ…

えんぶり感傷旅行(3)~東奔西走~

月をまたいだのではどうも間が抜ける気がするので、残りの三日をまとめて記す。 【某日】 ○昼 十三日町『Porta Otto』へ。ランチが有名で人気なのも分かる。肉・魚・野菜で十二、三種類はある前菜の盛り合わせにパスタ(鱈と菠薐草のトマトソース)、食後の…

えんぶり感傷紀行(2)~まぼろしの囃子~

朝食もそこそこに長者山新羅神社へ。奉納摺りが中止なのは分かっちゃいるけど、せめて同じ場所で昨年のあの記憶をたどりたかった。 まずは無事八戸に着いた御礼を、と思うが賽銭箱がいつもの場所にない。訊ねるにも神職は女性と話している。聞くでもなしに聞…

えんぶり感傷旅行(1)~艱難辛苦は神の声~

粉雪の店 一皿に北海の海あり。 極楽とんぼにも程がある。今回ばかりは痛感した。騒動で乗るはずの飛行機が減便対象になったくらいならともかく、そもそも本来の目的だったえんぶりも完全中止となった上、地震で新幹線が動かなくなった時点でなにかしら手を…

冬ごもり

色々あって気が滅入っているが、それでも本は読まねばならぬ。というか、本こそ間違いない慰め。○マーカス・デュ・ソートイ『レンブラントの身震い』(富永星訳、新潮社)…『素数の音楽』著者によるAIをめぐるサイエンス・ノンフィクション。チェスと囲碁…

辛丑(かのとうし) ご挨拶

吉例の腰折を三首。 辛丑元旦梅が香の童子前追ふ都路のあちが天神東風がかんじん鐘の音憂しと聞きしは昔にて角の女房にぎゅうとしぼらる大道で柔弱謙下と寢し朝の最上善は一杯の水 どうぞ今年もよろしくお願いします。